―流星の追憶― 

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鷺お題でSSその四「行き止まりは夢の島」

目くるめく連続更新! 創作の神様マジでありがとう!
という訳で、鷺お題小話第四段、今日は湯本さん宅のささくれお兄さんをお借りしています。
最後の方で信楽さん宅のお繁さんも少しだけお借りしています。

その…「♭」の方のお題を借りたので、本来はもうちょっとこうビターな感じにするはずだったんですが、
いつのまにかからりと爽やかな夕暮れの夏風っぽい話になってしまいました…
えー、と、せ、切ないってことで、ど、どうでしょうか…?

忘れてしまったものが帰る場所はきっと歩き始めた始まりの場所とかそんな話
終わりと始まりは紙一重とかそんな話
になるはずだったが非常に分かりにくい感じになってしまった^q^
そうさくムズカシイです…



またも自分妄想バースト気味になってしまっているので、
なんか違うーとかになってしまっていたら申し訳ありませんと先に謝っておきますorz

 

それではでは、追記からどうぞ。




「こんな夢を見たのです」 

  
 


■湯本家■
行き止まりは夢の島



 真っ赤な空を、何色にも染まった雲が穏やかに流れていく。
 ぺったん、ぺったん、
 サンダルがアスファルトにあたる度に奏でる、ちょっと気の抜けた旋律に、鼻歌で伴奏をつけながら、歩き続けていた。
 いつから? どこまで?
 まあ、そんなことはどうでもいいじゃありませんか、ねえ?

 じりじりと水平線へ落ちてゆく太陽の、燃え上がった光が網膜を通り抜けていく。
 帽子を深く被り直しても、眩んだ目には世界がよく見えない。真っ赤に染められた空とアスファルトを、長く伸びる黒い影が隠していく。
 ああ、そういえば、これくらいの時間を黄昏時と言うのだった、
 
(誰そ彼)

 遠くに見える人影が、人間なのかそれとも人ならざる者なのか、
 見分けのつかなくなる時間――


「♪――……」



 鼻歌BGMのチャンネルを、気まぐれにコロコロ転がしてみる。
 夕焼け空の天蓋の、天井の辺りから、少しずつ、蒼い色が降りてきていた。太陽はまだぎりぎり、水平線の上にいる。


 逆光の影を背負った、真っ黒で歪な形をした小山が、ふいに行く手に現れた。



 灰色のアスファルトが途切れて、歩きにくい砂利混じりの土の道に変わる。
 そして、その道を塞ぐようにして、「夢の島」は黄昏の闇に浮かび上がっていた。

 此処に住んでいるのか、黒いカラス達が何羽も飛び交っている。
 不思議なことに、微かな潮の香りがする以外には、何の匂いもしなかった。


 ここまで来て立ち止まるのもなんか悔しいですし、
 ということで、
 壊れて転がっている信号機にひょいと足をかけてみる。
 靴底の薄いサンダルでも、なんとか、自転車や冷蔵庫やテレビのアンテナやらを乗り越えて、歩き続けることが出来た。標高に直したらきっと10メートルもないかもしれない小さな山を登りきり、頂上に立つ。
 真っ赤な光線が、一直線に視界を焼いた。
 目の前には、闇色に沈み始めた海が、どこまでも広がっていた。

(行き止まり)

「ですかねぇ」

 海風に飛ばされそうになる帽子を押さえながら、ぽつっと一言。
 振り返ると、赤い世界は少しずつ色を失っていこうとしていた。夕日に焼かれたばかりの目には、暗闇の色が尚更深く見える。自分が歩いてきたはずの道も、闇にまぎれてほとんど見えなくなっていた。

 降りようかと、踏み出しかけた足が、微かに滑った。少し寂しげな金属の音を立てて、何かがカラカラと山を滑り落ちていく。特に深く考えるでもなく、拾い上げてみたそれには、何故か、見覚えがあった。

「……ネクタイピン?」

 なんでこんなものがこんなとこに。
 いやそれより、ネクタイピンなんてありふれたものだし、なんで見覚えがあるんだろうって方が問題ですよ?
 手の中の金属をぽいと放り出し、改めて、辺りを見回してみる。
 千切れた電線が何本か絡まった木製の電信柱に、ひっかかって揺れているやたら派手な色彩のバンダナや、
 金魚蜂からこぼれた極彩色を閉じ込めたビー球に、
 古びただけでまだ十分使えそうなギターやヘッドホンが冷蔵庫に寄り添っている。
 吹き抜ける海風に、トランプと花札が宙に舞う。
 他にも、それはもう、視界に捉えきることが出来ないほどの、鮮やかさを称えて、夢の島は闇に沈んでいこうとしていた。

  
(――ああ、もしかして)

 
 この全てと、僕は一緒にいたことがあるのかもしれない。



 見えなくなってしまうのは、闇に沈んでしまうのは、もったいないな、
 悲しいなと、
 そう思ったからかどうなのか、世界はいつまでも光と闇の狭間に赤く佇んでいた。
 いや、それどころか、少しずつその赤さを増しながら、夕焼けの中に輝いてみる。
 目を細めながら振り向けば、燃える太陽は、じわじわと、地平線から離れようとしていた。闇に溶けかけていた雲が色彩を取り戻し、光を放ち始める。
 話に聞いていただけの、そういえば見たことはないはずの、ええとつまり太陽が昇ってくってことはそれはつまり、

「これが夜明けってやつですね!?」

 思わず叫んだ大声に、カラス達が迷惑げにばさばさ飛び立ったがそんなの知ったことか。
 方角なんてどっちでも良い。ここが東の果てでも西の果てでも、こんなに綺麗ならなんでもいいや!
 
 ガランガランと派手な音を立てて夢の島を駆け下りながら、視界が闇の底から息を吹き返した道を見つけた。ここは行き止まりじゃなくて、ゴールでもデッドエンドでもなくて、いつだって始まりの夢が眠る場所。

 愛しく素晴らしい眺めだけれど、ここにあるのは忘れられたものばかりだ。
 朝焼けの道を早く帰ろう。
 どうせ来るなら今度は愛しいあの人と一緒に来よう。
 忘れる暇もない大切なものは、この夢の島にひとつもないから、だから、

 ぺったんぺったん、サンダルの音が軽やかに響いていく。
 道案内のように、行く手に伸びる自分の影を追いかけながら、どこまでも走っていく。


(今日も良い天気だと良いなあ)


 そう、早く帰ろう。










「ささくれさん?」


 ぽかっと目を開けると、蒼い快晴の空を背景に、どこまでも綺麗な翠色が見えた。

「あ」

 呟きの方が、思考回路より先に零れた。一瞬の間を空けて、

「うおおおおおお繁さんッ!?」

「え、ああ、はい」

「ななななんでこんなところに! ハッ!もしかして僕のとこに遊びに来てくれたんですか!? ってまさかこの暑いのに!? 大変だ! お繁さんの美しい髪が真夏の紫外線に焼かれてしまう!というか熱中症とか!大変だ!いやそうじゃなくて、ええとなんだったっけ!?」

 くすくす、くす、と葉擦れのように控えめな笑い声が耳をくすぐった。
 跳ね起きるや否や、頭を抱えたり太陽を呪っ…指差したり、てんやわんやだった両腕が思わず動きをとめる。

「あんまり気持ちよさそうに眠ってたものですから、ふふっ…。少し声を掛けるのを躊躇ってしまっただけですのよ。落ち着いてくださいまし」

「いやその、だって、目が覚めていきなりお繁さんの顔を間近に見られるなんて落ち着けって方が無理ですよ…? ……あ、あれ、そういえば今日はお義兄さんはどちらで?」

「多分、近くには……。私と一緒に来たんですけれど、ささくれさんの気持ちよさそうな寝顔を見たらヤる気が失せたとか言って散歩に行きましたから」

「(なんか今やる気のアクセントが若干ちょっと不穏なものだったような)そうだったんですか! うわーせっかく遊びに来てくださってたのに寝てたなんて!申し訳ない!! あっ、そうだお繁さん、何処か行きたいところありますか!? いくらでも案内しますよ!(あわよくばこのまま二人きりに…!)」

「ささくれさんが連れていってくださるなら、私は何処でもよろしゅうございますよ」

「マジですか!! えっとえっと、じゃあ何処がいいかな、そうだ、今ちょっとバイク出してきますんでちょっと待っててくださいね!!!」




(そう、帰る場所はいつだって、)
 
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